いろいろと凝ったミステリー小説~読書感想「白ゆき姫殺人事件」
今日の読書感想はこちらです。
「白ゆき姫殺人事件」湊かなえ
映画化された有名な作品です。
映画は見ていないですが、小説はおもしろかったです。
以下ネタバレあります。
構成が凝ってます
文庫版を読みましたが、ストーリーの構成が変わっていて、かなり凝っています。
まず、ストーリーですが、美人で評判のいいOLが殺されます。そして、その犯人として同期のOLが社内で噂されます。その噂を聞いた週刊誌の記者がその内容をネットにあげたり、記事にしたりすることで世間にも知れ渡るようになり、同期のOLが犯人と確定したように世間で扱われるようになります。はたして、本当に犯人なのか・・という話です。
まず、小説の構成ですが、人の言葉のみで展開していきます。会社の子であったり、犯人とされたOLの友達だったり、または友達からの手紙だったりなどで、「わたしは・・」といった一人称の文章になっています。会話や状況説明などは一切出てきません。
基本的に、記者目線での話で進んでいきます。インタービューした内容や出版社に来た手紙などで進んでいき、最後に犯人扱いされたOLの手記でラストを迎えます。
同期OLを悪く言う人、良く言う人が交互に出てくる感じで、実際このOLはどんな子なのかがわからなくなってきます。ひとつの動作をとっても人によって捉え方がバラバラなので、いい子なのか悪い子なのか全くわからないです。
このOLが本当に犯人なのかどうか、実際はどういう子なのか、あの時の行動はなんだったのかなど、すごく気になる点が多いので、最後の同期OLの手記はのめり込んで読みました。
ラストは想像していない意外な展開でした。
Twitterのようなもので拡散
この小説の構成でもうひとつおもしろいのが、後半に資料としてどのように同期OLが犯人として扱われるようになったのかが別にまとめてあるところです。
資料には、Twitterのタイムライン(小説では「マンマロー」と呼ばれています)や週刊誌の記事、新聞記事、ブログなどが載っています。
前半は人の言葉だけですが、段落ごとに「資料XXXページ参照」と紹介されており、事件の真相はこちらを読まないとわからないです。
ただ、その都度後半の資料を見るのもいいとは思いますが、わたしは最後にまとめて読むほうをおすすめします。
意外な結末なので、その真相をもう一度後編の資料を見ながら追っていくと、この小説の面白さがあとからじんわりくると思います。
「この子が言っていたことはこうやって記事になってたのか~」とか思います。
特に、Twitterのタイムラインの展開はおもしろいです。実際「こんなつぶやきしたらこういうツイート返ってきそうだな」てのが多くて、読んでいて引き込まれました。
人に対するヒガミ
この小説の根本になるのは、女性間のライバル心、ヒガミがあります。
あと人よりきれいになりたい、いいものを着ていたいなど、比較されても負けたくないという思いからいろいろなことが起きてきます。(「いろいろなこと」はネタバレなので触れないでおきます)
映画では「犯人扱いされるOLの名前や住所がネットで拡散していき、彼女が犯人であることが確定したように扱われる」という点がクローズアップされているように思いますが(実際映画は見ていませんが(笑))、小説では女性どうしの感情のぶつかり合いが大きなテーマだと感じました。
例えば、犯人扱いのOLの笑顔は、嫌いな人から見れば「気色悪い」「暗い」と表現され、仲の良い友達からは「癒される」「屈託がなくかわいい」と表現されます。
社内という限られた範囲内での人付き合いの本質を付いているような小説でした。
女性に限らず男性のわたしでも、「そういうふうに言ってしまうことあるよな~」と思いました。
「意外なラスト」と「凝った構成」でとてもおもしろいミステリーでした。
【あとがき】
文庫本は長時間移動の時間つぶしには最適ですね(^^)